CAPDカテーテルの挿入術は難しいものではありませんが、カテーテル関連合併症の多くは手術方法によって未然に防ぐ事ができます。合併症を少なくし挿入術を容易にする目的で開発された、ループS型カテーテルの留置術のポイントを紹介します。
必要な器材と前準備
機材
- ループS型カテーテル(現在生産中止製品)、スタイレット
- アダプター、接続チューブ一式
- 強弯タンネラー
- X線イメージ装置
留置前準備
- 滅菌袋に穴やキズ等がない事を確かめる(穴やキズ等がある場合は、使用しないで下さい)。
- カテーテルを取り出し、生理食塩水に浸す。
- 空気を抜くためカフを生理食塩水中でしごく。
ループS型の施術方法
1.開腹方法
経腹直筋開腹法(腹直筋中央部で開腹)で行う。
正中切開、傍正中切開は各々図のa,bである。
2.挿入部位の決定
カテーテルを図のように置きベルトラインをさけ、
正中から2~3㎝横に切開部位を決め、局所麻酔を充分にする。
3.皮膚切開
3~4㎝の皮膚切開をおく。皮膚切開後は電気メスで切開し、止血しながら脂肪層を分けて、腹直筋前鞘に達する。
結紮止血は糸が異物となり、感染した場合難治性となるため避ける。
4.腹直筋筋膜切開
前鞘および筋層に局所麻酔を充分に加える。
前鞘を電気メスで切開し、ペアンと鈎で筋層をやさしく丁寧に分け入り、後鞘、腹膜へ達する。
5.後鞘、腹膜の切開
2本のモスキートコッフェルで後鞘、腹膜を一緒に数回つまみ直し、2点でテント状に吊り上げる。
2点の中央に小切開を加え、4本のモスキートコッフェルでつかみ直す。
6.タバコ縫合
タバコ縫合は丸針と、#3-0モノフィラメントナイロン糸を使用し、4本のモルキートコッフェルで、順次腹膜を突っ張らせてかけていく。
創から腹腔内を見ると、呼吸性に大網などが上がったり下がったりしているので、タイミングをはかって下がった時に針を通し、大網をひっかけないよう注意する。タバコ縫合は2本かけておく。
7.カテーテルの挿入
X線イメージで行う。
ジェリーを塗ったスタイレットをカテーテルにとおし、呼吸性に朝刊と腹壁の間隙が拡がった時に恥骨結合部まで一気に挿入する。
8.タバコ縫合を締める
4本のモスキートコッフェルを持ち上げながらその下で締める。
そのままではモスキートコッフェルが摘んでいる腹膜は閉鎖されていないため、締めた糸をもう一度廻してこの部分を閉鎖する。2本目も同様にする。
さらにこの糸でカフに固定する。
9.前鞘の縫合
カテーテル肉厚補強部を筋層内に可能な限り埋め込む様に前鞘を縫合していく。
この事によりカテーテルは腹腔に沿って下方への方向づけができ、位置異常を起こしにくくなる。
腹膜縫合も縫合糸膿瘍予防のためにも、#3-0ナイロンを使用し、カテーテルの損傷予防のため丸針の使用が望ましい。
10.出口部の作製
S型のカテーテルはループ部を正中に向けた場合、出口部は外側に向くようになっており、臍を気にすることなく容易に出口部を作製できる。
皮下トンネルは強弯のタンネラーで一気に下向きに出口部を作る。出口部より1㎝でカテーテルを腹壁に針糸で固定する。
11.カテーテルの留置部の位置関係
カテーテルの腹壁内の断面は左図のようになる。
12.術直後より透析液1500ml注入
正常な腹腔内は臓器で充満されており、カテーテルが自由に動けず、ダグラス窩へ入りにくい状態である。
液体が充満することによりカテーテルの自由な動きが可能になり、このカテーテルの補強による弾性の強化と、ループ内の重みで自然に先端がダグラス窩へ収まる。
初回注入後、X線撮影して、ダグラス窩へ留置されているのを確認する。